rirelog

「スーパー!」

permalink

+



「スーパー!」

すごく心に沁みました。食堂のコックをしているさえない中年男が、チンピラにシャブ漬にされて連れて行かれた妻を取り戻すために、自分でヒーローのコスチュームを作って、悪に立ち向かっていく…というお話。見た目やパートナーが若い女の子という点など、と共通する要素が多いので、どっちが好きかという談議になりがちなんですが、内容は全く別物と考えていいと思います。「キックアス」がマンガの世界だとすると、「スーパー!」は現実の世界という感じ。

ヒーローものなのに、武器はスパナ一本でぶんなぐるだけ。しかも物凄く弱い(笑)。これで世の中の悪に立ち向かいます。主人公は敬虔なクリスチャンで生まじめ。神を物凄く信じていて、精神的に倒錯しています。盲信的で思考に中間がない。だから、行列に割り込んだだけで”悪”ときめつけ、スパナでぶんなぐったりします。そのあとボッコボコに逆襲されますが(笑)。

主人公はまじめ過ぎるあまり、頭がちょっとおかしくなっているんですが、その物悲しさというか、真面目に生きている人間の悲哀がものすごく映画の世界観のベースとなっている気がしました。アメリカ人の多くは、彼みたく神の存在が絶対と信じていて、そんなに裕福ではないけどつつましく暮らしている。多くは弱者であり、搾取される側です。そういったリアルな現実世界から逃避するようにヒーローになることで”世界=自分”を変えようとする…。リアリティが凄くあって、物語にぐいぐい引き込まれていきます。後半は「タクシードライバー」を彷彿させる展開に物語は急加速。彼は沢山のものを得ると同時に沢山の大切なものも失っていきます。そして…最後に”1つだけ何かを得る”のです。

24日でとったという、おそらく予算もそれほどかけていない映画なんですが、リブ・タイラー、ケビン・ベーコン、エレン・ペイジ(「ローラーガールズダイアリー」)レイン・ウィルソン(「ギャラクシー・クエスト」)など俳優陣はかなり魅力的です。

上映時間も96分と尺もちょうど良く、是非お勧めしたい映画です。

 そういやも似たような設定だったな…。

「スーパー!」7/30から シアターN渋谷 新宿 武蔵野館にて


コメント


*

コメントはrirelog編集部により完全管理されています。 編集部判断のもと誹謗中傷やトラブルを招く可能性が少しでもある発言もしくは禁止ワード を含む発言は掲載されない場合がございますので、あらかじめご了承ください。また一度に連続してコメントをするとスパム(イタズラ)とみなされる場合がございますのでご注意ください。
なお、それらについての質問やクレームは一切受け付けておりません。

以上のことをご理解いただいた方のみコメントしてください。